東日本大震災、その日から3年が過ぎ、「風化させない」「忘れない」と目や耳にする事があります。
前に進むための「風化させない」「忘れない」が、何なのかと思いを巡らしています。
京都にも春の足音が、聞こえ始めた頃、いつもの面々と、お久しぶりのお顔で、より一層、にぎやかに宴が始まります。
会長『ここに来る前、同じ人から今日3回目の電話だったんだよ。この前お祓いした子どもさんの父親が、「こうなった」「ああなった」って喜びの話ばっかり。
それで最後の電話が、夕方5時でね、「医者が首を傾げた」って言うんですよ。そりゃ傾げるわな。
「今日死んでも不思議じゃない。」その我が子を……
親の決断が良かった。「もう良いです。自宅に連れて帰ります……。」
もう6回も手術しているんですよ。生まれて2週間目から2歳半に至るまで、6回も手術しているんです。心臓、肺、肝臓……難病中の難病。身体にたくさんの管を通しながら俺らとの待ち合わせたホテルに来た。
その時、まだ、親とも挨拶していない。初めて会っているんだけど、俺らと1分間……目を合わせた。
俺らが「なぁっ!」って言うと……
その子が「うん!」って言うんだよ。
これだけなんだよ。これが琴線って言うやつよ。
それでホテルの部屋に入った。その子が、車いすから降りたので親が、「いやっ!乗せないと……」
俺らが『良いから降ろせ』って言ったら、その子が「降りる!」って言ってね、『歩け!』って言ったら、足を踏み出すんですよ。その子にとっては、経験したことないことばかり。『起きろ!』って言えば自分で起きるし、『這え!』って言えば這おうとするんだよ。
でも大きな呼吸したらやばいんだよ。心臓の四室ある中の一室しか機能していないんだよ。医者が、何かしたら直ぐに死ぬと言う。今日、明日かも知れないと言っている中で、親が「退院します」って言ってきたんだ。
所謂一般的にいう奇跡。奇跡中の奇跡やな。
でも父親は、この2年半の中で相当勉強しているね。「本も読みました。依存心だけでお願いしていません。覚悟は、できている。だけど医者じゃだめだから。天に任せましょうねと言われたら……、きっともう涙も枯れ果てています。」
俺らが、送ってあげられるその最後の宣告者みたいな形だったんだな。だから「良くなろう」だなんて考えていない。安らかに逝かせてあげたい。薬も断る、病院も断る、全部断ったところに俺らと繋がる朗報が入ったのよ。
そのホテルの部屋の中で、その子が、タッタッターと這おう、歩こうとするものだから……。もう、親たちは、泣きっぱなし。
んっ!? どんどんその子の顔が赤くなってくる。動いているから。良い顔色になってくるんだよな。
お祓いして良かったなあって言う世界だけど、「滅多に」じゃないのよ。今、ひとつのことを言ったんだけど、昨日も一昨日も全部そうなのよ。そう言うのばっかり。』
※『所謂一般的にいう奇跡。奇跡中の奇跡』
「奇跡(きせき、英: miracle)は、神など超自然のものとされるできごと。人間の力や自然法則を超えたできごととされること。」だそうだが……、
「超自然」なんて無い。自然と思われることを超えたとしても、それも「自然」なのだと思う。
「人間の力や自然法則を超えたできごと」これも無い。そう見えるだけでホントは、「人間の力」であり「自然の法則」なのだと思う。だから「超能力」も無い。当たり前の「能力」なのである。我欲が、極めて小さくなった時にホントの「能力」の先っちょが、出てくると言う事を会長にお会いするたびに教わっている気がします。
『俺らタクシーに乗るときに冗句を言うのよ。でも、誰にでも言う訳じゃなくて、乗った瞬間に運転手さんの顔を見て……この冗句、通じるかな?って思うと……
『ハワイに行って』って言うんだよ。俺らの中で上からA/B/Cのランクがあって、Cは、笑うんですよ。Bは、「どの様に行きましょう。」Aは、「ありがとうございます。一緒に行きましょう。」って言うのよ。これ全部冗句でしょ。ねぇ……心の在り方かな。
それと「何言ってるの?」って言う人には、言わないもん。その次元の人には、言わないから。
そこから話が、楽しくなる。京都のホテルからここのお店まで千円かからない距離なんだけど、運転手さんによっては二千円になったり、『ごめんなさい。おつりどうぞ。』って言ったら「良いんですか!」って言ってタクシーから降りて送ってくれる人もいるんです。
だからどんな時間でも人生っていうのは、誰かと会っているんです。その時につまらない時間を作りたくないね。タクシーに乗っていても運転手さんと楽しくやる。どこかに呑みに行っていても横に居るお客さんとも楽しくやる。そうでなきゃ、面白くないよね。
同じ一日だもんね。それをどう楽しく過ごすか……。それをしょうもない自分の料簡の狭いところでタクシーに乗ってもつまらん。「送ってもらうだけ」「お金を出してるやん」と思うのか、その運転手さんと楽しく喋るのか……でしょ?運転手さんとの話は……すごいドラマよ。それと運転手さんは、自分だけのことを言わない。色々な話が聞ける……楽しいね。
それで「着いちゃいました。」
『ちょっと待って。もっと聞きたいから、もうちょっと先のあそこまで行ってぇ。あと10分……』って。
「ありがとうございます」って言ってくれる。メッチャ面白い。』
こんな話を聞いたからだろうか。帰りのタクシーは、楽しかった。さすがに『ハワイに行って』とは、言わなかったが、他愛もない話で盛り上がった。運転手さんの表情をずっと見ていた訳ではないのですが、話し声の調子が、運転手さんの微笑み顔を耳から入って脳裏に伝えてくれました。
私が無口なので、たくさん話をして下さった会長が、お疲れなのか、馴染みのバーの壁に向かって誰かと「ムニャムニャ」と話し始めました。会長にとっては少し早い時刻にこんな状態に……
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